森の不思議物質「フィトンチッド」と人間



植物が持つ物質が細菌を殺す力があることを最初に報告した(1930年)のはロシアのトーキン博士です。彼は「植物が傷つくとその周辺にある他の生物を殺す何かの物質を出している」という現象に気づき、その物質をフィトンチッドと名付けました。



フィトンは(植物)、チッドは(殺すもの)という意味です。トドマツやイソツツジの葉を傷つけると、そこから発散されるフィトンチッドはブドウ球菌、連鎖状球菌、ジフテリア菌、百日咳菌などを殺してしまう作用があります。例えば、百日咳にかかった幼児のいる託児所内の部屋にトドマツの枝を入れて床に散らしておくと空気中の細菌類が10分のくらいに減ってしまうという調査報告があります。




また、森林浴や森林セラピーという言葉も日常的に聞かれるようになってきましたが、これらの健康法も自然の森の中へ入って爽やかな空気を吸い、心身をリラックスさせようというものです。昔から「森に住む人は長生きする」などの言い伝えがあるように、森の空気には鎮静、殺菌、安眠、血行促進などの薬効があると言われています。1990年当時の農林水産省が行った実験ではストレスにより増加する副腎皮質ホルモン、コルチゾールが森林浴によって減少することが明らかになりました。




私たちの身近な和菓子、桜餅や柏餅を包む葉っぱは四季折々の特有の香りを楽しみ、かつ食中毒を誘発させる菌を殺すために私たちの先祖たちが、とうの昔に発見していたフィトンチッドです。




森林浴で森の中に漂っている代表的な木々の香りはモノテルペン炭化水素類のαーピネンという芳香成分です。このαーピネンを使い大学で以下の実験が行われました。ストレスが免疫反応を抑制することが知られていますが、マウスを15分間動けないように拘束ストレスを与えます。すると免疫系の主役であるリンパ球の産生が落ちました。つまり、ストレスが免疫反応を低下させるのです。そのマウスに&ーピネンを嗅がせますと、今度はリンパ球の産生が促進され免疫反応が復活するのです。


ちなみに森林浴効果のある精油は、サイプレス、ジュニパー、シダー、アカマツ・ヨーロッパ、パインなどです。


香りがストレスによって低下した免疫機能を高めることが人間でも実証され、日常的な心と身体のケアに役立つ可能性は充分にあります。日頃からアロマ精油でブレンドしたルームスプレーを使ったり、アロマのお風呂に入ったり手軽に生活に取り入れることで、空気もきれいになり気持ちも安らぎ、免疫力も上がっていきます。




人々の心が複雑に病む現在社会でこそ目に見えぬ香りの効能を知り、日常的に上手く取り入れることによって優しいケアができる、何より心も安らぐ、これがアロマテラピーの素晴らしさです。介護現場やホスピスなどでもセラピストが活躍しています。周りの看護師の中にもアロマテラピーを学びセラピストとして実践されている方々がいらっしゃいます。皆さん、いつも元気で明るく聡明で頭が下がります。