オーストラリアの黄金 ティートゥリー

 

 

 

      アロマテラピーで役立つ代表的な精油といえばラベンダーとティートゥリーですが、意外に知ら

   れていない天然の消毒殺菌剤ティートゥリーについての歴史を探ってみたいと思います。

 

 

      ティートゥリーはオーストラリアのニューサウスウェールズの北岸に沿った狭い湿地帯に

      自生している木です。太古の昔から原住民の人々はこの木の葉に薬効があることを

   よく知っていました。切り傷、火傷、虫さされ、皮  膚病などになれば、押しつぶした葉を

   ふりかけその上に温かい粘土をあてて治療していたそうです。

   ティートゥリーは生活に欠かせない大切な自然の薬でした。

 

 

 

    18世紀、この地にイギリスの航海家クック船長一団が立ち寄ったのですが、ある日、部下の

   船員たちが試しにこの葉でお茶をいれたところスパイシーな風味があり、単調な飲み物に

   飽き飽きしていた彼らは好んで飲むようになりました。

 

 

    このリフレッシュできる茶のなる木をクック船長が「ティートゥリー」と名づけました。

   この時、植物学者も同行していて標本は取ったものの、素晴らしい治療特性がある植物だと

   気づかず彼らはこの地を去りました。ティートゥリーは長い間、先住民と一握りの白人入植者

   しか知らない未開地の薬として取り残されました。

 

 

 

    先住民たちにはとても大切なティートゥリーでしたが、土地を開拓し酪農をする入植者に

  とっては邪魔な木でもありました。少しでも根が残っていると再生しすぐに成長してしまうので

  根こそぎ手で掘り起こさなくてはいけません。

 

 

  悪態をつきながらも彼らは自分たちが怪我や感染症にかかるとティートゥリーの葉を使って

  喜んで治療していたそうです。入植者の中にはあまり偏見を持たない人もいて先住民の

  薬草の使い方を熱心に観察し、医師や西洋薬のない地で薬代わりにしていました。

 

 

 

  ティートゥリーはフトモモ科の仲間で変種を含めると300種以上ありオーストラリア全土に

  広がって生息していますが、素晴らしい医療特性をもつものはたった1種類だけだそうです。

  この地に住む先住民が大切にしていた植物だけということが、1925年のオーストラリアの

  科学者アーサー・ペンフォールドの研究発表で明らかにされました。

 

 

 

  ニューサウスウェールズのバンガワルビンの湿地帯に生育するティートゥリーの1種

  「メラレウカ・アルテルニフォリア」が、この当時の消毒剤の石炭酸(フェノール)より

  13倍も強力な抗菌特性をもっていることを発見したのです。

 

 

 

  しかも、石炭酸は皮膚を荒らしますが、この精油には刺激性がなく毒性もないことが

  わかりました。現在では、オーストラリアのメラレウカ・アルテルニフォリア精油については

  品質に一定の厳しい基準があり、テルピネン-4-オールの含有量が30%以上、

  シネオールの含有量が15%以下であることが求められています。テルピネン-4-オールが

  少ないと治療特性が低く、シネオールが多いと皮膚刺激となります。

 

 

 

  アーサーの発表を発端に他の科学者や医師たちも本格的に研究に取り組み始めました。

  そして、次々にオーストラリア医学誌や薬学誌にティートゥリー精油の殺菌消毒特性や

  治癒力について発表、1933年にはアメリカやイギリスの医学誌にも載るほどになりました。

 

 

 

  第二次世界大戦の間、ティートゥリー精油は応急手当キットに加えられ熱帯地域の陸海軍に

  支給されたり、フランスの軍医が戦傷治療に使われたりしました。他にもイギリス帝国軍艦の

  乗組員の水虫治療に使われ、その需要が多過ぎるため科学者たちは合成殺菌剤を開発して

  いくことになります。これらの代替品は天然精油ほど効果的でありませんでしたが、圧倒的な

  大量生産で市場からティートゥリーがしだいに消えていき、大戦が終わった後には新しい現在

  的な合成薬品が主流となっていました。

 

 

 

  1950年の初めにはバンガワルビン地域で稼働している蒸留器は50基から3基に減りまし

  た。この状況は1970年代まで続きますが、1960年代のヒッピー革命という新しい流れで

  20年後には一変します。多くの人々が現在社会の抱えている問題に気づき自然回帰へと

  向かっていくのです。

 

 

 

  薬の副作用や化学物質が引き起こす環境汚染の深刻さにも目覚め始めました。

  奇蹟の薬だと信じられていた抗生物質が効かなくなる耐性菌が出現、人々は不安を抱き始

  め、より安心で健康にもよい自然なものを求めハーブやアロマテラピーが注目されていくように

  なったのです。忘れられていた「ティートゥリー精油」が再び脚光を浴びていきますが、

  オーストラリアの1地域の野生の木からしか採れない良質な精油産出量は極めて少なく収穫

  は大変困難でした。

 

 

 

  そんな時、1976年にシドニーのクリストファー・ディーンが長い歳月をかけティートゥリー農場

  を設立します。3人の幼い子どもを抱えて電気も電話もない小さな移動小屋で5年間暮らした

  そうです。初めの頃はごく少量の精油しか蒸留できなかったそうです。

 

 

 

  開拓の苦しさから何度も放棄しかけたものの、クリストファー自身が感染症をティートゥリーで

  治した実体験を持ち、自分の育てるティートゥリーに対しての強い信念がありました。

  最初は友人たちに無料で分け与え、それが好評で日曜市に出すようになったそうです。

  徐々に協力者も得られ、数年後にはオーストラリア全国の健康食品店や薬局などで

  「1ビンの万能薬」として販売されました。

 

 

 

  その後は新たな生産農場が次々と参加、生産量も高まり、一時は忘れ去られていた

  ティートゥリー精油が「オーストラリアの黄金」として、オーストラリアから世界中に輸出されて

  いきました。今ではアロマテラピーには欠かせない精油の1つです。

 

 

  小さなビンに入った1本の精油には、一言では語れない植物と人類との長くて深い歴史が

  詰め込まれているのです。

  大切な地球からの恵みと先人たちの知恵の賜物、それが現在の精油なのだと思います。

 

 

 

 

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